Appendix D — 医療経済実態調査分析
E 医療経済実態調査分析
E.1 厚生労働省第24回医療経済実態調査(2023年)データ分析結果
E.1.1 調査概要
- 調査名: 第24回医療経済実態調査(医療機関等調査)
- 公表日: 2023年11月27日
- データソース: e-Stat政府統計ポータル
- 対象施設: 全国の病院・診療所・薬局
- データ期間: 令和5年3月末までに終了する直近の2事業年度
E.1.2 主要分析結果
1. 一般病院における人件費構造
給与費の構成比率(医業・介護収益に対する割合)
法人種別 | 給与費構成比率 | 給与費額(前年度) | 施設数 |
---|---|---|---|
医療法人 | 57.1% | 1,117,519千円 | 122施設 |
国立 | 54.8% | 2,735,585千円 | 20施設 |
公立 | 62.8% | 2,639,786千円 | 382施設 |
公的 | 53.7% | 5,029,262千円 | 43施設 |
社会保険関係法人 | 56.6% | 3,480,730千円 | 6施設 |
その他法人 | 53.8% | 2,397,377千円 | 126施設 |
全体平均 | 56.9% | 1,913,038千円 | 699施設 |
2. 精神科病院における人件費構造
給与費の構成比率
項目 | 給与費構成比率 | 給与費額(前年度) | 施設数 |
---|---|---|---|
精神科病院全体 | 67.4% | 927,942千円 | 230施設 |
3. 病院種別による人件費比較
国公立を除く病院種別
項目 | 給与費構成比率 | 給与費額(前年度) | 施設数 |
---|---|---|---|
国公立を除く一般病院 | 55.3% | 1,725,669千円 | 561施設 |
国公立病院(参考) | 61.5% | 2,653,279千円 | 142施設 |
E.1.3 分析から得られる知見
主要な発見事項
- 人件費が最大の費用要素: 全ての病院種別において、給与費が医業・介護収益の50%以上を占める
- 公立病院の高い人件費比率: 公立病院(62.8%)は他の法人種別より高い人件費比率
- 精神科病院の特徴: 精神科病院は一般病院より約10%高い人件費比率(67.4%)
- 全体平均: 一般病院の給与費は医業・介護収益の約57%
国民医療費との関連性
- 国民医療費: 46.7兆円(2022年度)
- 病院医療費: 国民医療費の約65%(推計30兆円)
- 病院部門人件費: 30兆円 × 57% = 約17兆円
この分析により、「医療機関の主要な費用は人件費である」という記述が政府統計データによって裏付けられた。
E.1.4 データの信頼性
- 政府公式調査: 厚生労働省実施の公的統計
- 代表性: 全国の多様な医療機関が調査対象
- 継続性: 定期的に実施される調査(第24回)
- 透明性: e-Stat政府統計ポータルで公開
E.1.5 本文への反映内容
本分析結果は、本文の以下の箇所で活用された:
「厚生労働省の医療経済実態調査によると、一般病院における給与費は医業・介護収益の約57%を占めている[1]」
この記述により、ROI試算における人件費削減効果の算出根拠がより信頼性の高いものとなった。