gantt dateFormat YYYY-MM title EHDS実装スケジュール section 規則制定 規則発効 :done, 2025-03, 1d section 準備期間 実施法令策定 :active, 2025-04, 2027-03 加盟国準備期間 :2027-03, 2029-03 section 段階的実装 第1グループ適用開始 :2029-03, 2031-03 第2グループ適用開始 :2031-03, 2034-03 section 国際展開 第三国参加受付開始 :milestone, 2034-03, 0d
2 EHDSの概要と背景
2.1 背景と目的
EHDSは、2020年のCOVID-19パンデミックの教訓と、2020年2月に発表された欧州データ戦略を背景に構想された[1]。
- 患者の権利強化とデータ主権
- 医療の質と効率の向上
- 研究・イノベーションの促進
- 産業競争力の強化
2.2 二つの利用形態
2.2.1 一次利用(Primary Use)
患者と医療従事者による直接的な医療データ活用:
- 電子処方箋の越境利用
- 患者サマリーの共有
- 検査結果へのアクセス
- 医療画像の共有
2.2.2 二次利用(Secondary Use)
研究、政策立案、イノベーションのためのデータ活用:
- 臨床研究・疫学研究
- 医薬品・医療機器開発
- AI/機械学習モデル開発
- 政策効果の測定と評価
- 医療システムの最適化
2.3 EHDSの法的根拠
事実:EHDS規則(EU 2025/327)は2025年3月5日に欧州官報(Official Journal L 76/1)に掲載され、掲載から20日後の2025年3月26日に発効した[3]。
この規則は、以下の既存EU法と連携して機能するとされている[1], [3]:
- GDPR(一般データ保護規則):個人データ保護の基本原則
- 医療機器規則(MDR):医療機器の安全性と性能
- 体外診断用医療機器規則(IVDR):診断機器の規制
- データガバナンス法:データ共有の枠組み
- データ法:データへのアクセスと利用
2.4 EHDSの野心的目標
欧州委員会の2022年提案文書および影響評価報告書によると、EHDSを通じて以下の経済効果を見込んでいる:
- 2030年までに全EU市民の電子健康記録へのアクセス実現(EU2030デジタル目標の一部)[4]
- EHRシステム認証コストの削減:製造業者あたりの認証コストを2万~5万ユーロから1.2万~3.8万ユーロへ約30%削減[1]
- 経済効果の推計:影響評価報告書では、今後10年間で少なくとも10.8億ユーロの経済効果を推計(一次利用から5.4億ユーロ、二次利用から5.4億ユーロ)[2, pp. 69–70]
- 市場成長予測:デジタルヘルス製品市場の年間20-30%成長、ウェルネスアプリ市場の年間15-20%成長を予測[2, pp. 54–55]
2.5 実装フェーズ
事実:EHDS規則は以下の公式タイムラインで実装される[3], [5]:
- 2025年3月:規則発効
- 2027年3月:規則適用開始、実施法令採択期限(発効から2年後)
- 2029年3月:第1グループ優先カテゴリー(患者サマリー、電子処方箋)および二次利用規定の適用開始(発効から4年後)
- 2031年3月:第2グループ優先カテゴリー(医療画像、検査結果、退院報告書)および遺伝子データ等の適用開始(発効から6年後)
- 2034年3月:第三国のHealthData@EU参加申請開始(発効から9年後)
Note
注記:このタイムラインは規則で定められた法的期限だが、技術的・組織的複雑性により遅延の可能性も指摘されている。