金融庁の2025年以降の動向と重点施策

概要

金融庁は2025年以降、「資産運用立国」の実現を最重要課題として位置づけ、包括的な金融行政改革を推進している。2025/1/17の「金曜例会」にて出された「今後の金融行政の方向性」では、以下の重点施策が掲げられている:

・資産運用立国の実現 ・サステナブルファイナンスの推進 ・デジタル技術を用いた金融サービスの変革への対応 ・金融システムの安定・信頼と質の高い金融機能の確保(サイバーセキュリティへの対応強化) ・金融行政の進化・深化(日銀と連携した共同データプラットフォームの段階的運用開始、2025/3から本格的なデータ収集を開始)

この方針を実現するため、2025年7月に新設される資産運用課を中核として、資産運用業を金融業の新たな柱に育成する。また、国際金融センターとしての競争力強化を通じて、持続可能で包摂的な経済成長への貢献を目指している。

主要なポイント

1. 組織体制の強化と資産運用立国の実現

  • 資産運用課の新設(2025年7月予定)

    金融庁監督局内に「資産運用課」を新設し、銀行業・証券業・保険業と並ぶ第4の監督担当課として位置づける。これは2018年7月の組織再編以来6年ぶりの課新設となる。

  • 主旨

  • **資産運用立国の実現に向けた取組についてでは、以下のような施策が挙げられている**

    • 大手金融グループ等の運用力向上プラン
      • 16の金融グループ等が以下の3つの観点からプランを策定・公表している
        • 経営戦略上の位置付け: 資産運用業を成長・注力分野として、グループ内の他の事業・機能と並ぶ柱として位置付け
        • 運用力向上: オルタナティブ分野・アクティブ運用の拡充、外部運用会社との提携、人材確保・育成
        • ガバナンス改善・体制強化: プロダクトガバナンスの強化、経営トップ選任プロセスの透明化
    • 新興運用業者促進プログラム(日本版EMP)
      • 新興運用業者のシードマネー獲得を支援するための官民連携の取組
        • 金融機関に新興運用業者の積極的活用を要請
        • エントリーリストの提供
        • ミドル・バックオフィス業務の外部委託による規制緩和*
    • 投資運用業者の参入促進
      • ミドル・バックオフィス業務の委託に係る制度整備として、以下の改正が行われた
        • 任意の登録制度創設: ミドル・バックオフィス業務を受託する事業者の登録制度
        • 登録要件の緩和: 人的体制整備要件の緩和、資本金要件の引下げ(5000万円→1000万円)
        • 運用権限の全部委託: ファンドの運営機能(企画・立案)に特化し、運用(投資実行)を全部委託することが可能
    • アセットオーナー・プリンシプル
      • 2024年8月28日に公表された、アセットオーナーに求められる5つの原則。
        • 原則1: 運用目的、運用目標及び運用方針の策定
        • 原則2: 専門的知見に基づく体制整備
        • 原則3: 適切な運用方法の選択とリスク管理
        • 原則4: ステークホルダーへの情報提供(「見える化」)
        • 原則5: スチュワードシップ活動の実施

2. サステナブルファイナンスの推進

  • 企業開示の充実と信頼性確保

    ESG評価・データ提供機関に関する行動規範の整備や、気候変動対応に向けた企業開示の充実を進める 2

  • 金融機関による脱炭素支援

    金融機関による脱炭素に向けた企業支援等の推進、インパクト投資の実践促進を図る 2 [4]。

  • トランジションファイナンスの促進

    持続可能な社会の実現に向けた移行期間における金融支援の枠組みを整備する 2

3. 金融デジタル化への対応

  • フィンテック・Web3への対応

    フィンテック支援室の機能強化を通じて、Web3を含む新たなテクノロジーの動向を注視し、適切な規制・監督の枠組みを整備する 3

  • デジタル・分散型金融(DeFi)への対応

    急速に発展するデジタル金融サービスに対する適切な監督体制の構築を進める 3

4. 金融行政の高度化

  • データ活用の高度化

    AI・ブロックチェーン技術の活用を通じて、データ活用の高度化を推進する

    「データ活用の高度化などの金融行政の高度化」の中に、「共同データプラットフォーム(共同DP)」が挙げられている。(p.51)★

  • 政策発信力の強化

    国内外に対する政策発信力の強化、若手職員をはじめとする職員の能力・資質の向上を図る 1

  • 金融犯罪対策の強化

    マネーロンダリング・テロ資金供与対策、サイバーセキュリティ対策を強化し、金融システムの安定を確保する。

5. 国際連携の強化

予算・体制

  • 2025年度予算: 239億円(前年度比+5億円)
  • 新規定員: 資産運用課新設に伴う専門人材の配置
  • 重点投資分野: デジタル化対応、国際連携、人材育成 1 3

関連キーワード

  • 資産運用立国
  • NISA恒久化
  • サステナブルファイナンス
  • ESG投資
  • 金融DX
  • フィンテック
  • Web3
  • デジタルマネー
  • 気候変動対応
  • 金融行政の高度化
  • 国際連携
  • マネロン規制
  • サイバーセキュリティ

今後の展望

金融庁は2025年以降、これらの包括的な施策を通じて、日本の金融システムの安定と国際競争力の向上を目指している。特に「資産運用立国」の実現により、国民の安定的な資産形成を支援し、経済全体の生産性及び企業価値の向上を後押しする方針である 3。また、急速に変化する金融環境に柔軟に対応するため、継続的な政策の見直しと関係者との対話を重視していく 1 2

参考URL

  1. 金融庁公式サイト - 2024事務年度金融行政方針
  2. 金融庁 - サステナブルファイナンスの取組み
  3. 新しい資本主義実現会議 - 資産運用立国分科会
  4. ニッキンONLINE - 金融庁、7月に「資産運用課」新設
  5. 日本経済新聞 - 金融庁、資産運用課を新設
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